医療法人の社会保険についてが、わかりません。
今年になってから、歯科クリニックを医療法人にすることにしました。スタッフが3人
しかいないため、法人化する以前のまま、社会保険の手続きをすることをしませんでした。
その後、医師会の会合で他の先生から「法人になった場合についてはスタッフ数に関係なく、社会保険に加入する必要があるのではないか?」と言われてしまいました。
<ポイント>
歯科クリニックを個人経営していた場合については、5名未満のスタッフ数であれば、社会保険には加入しなくても構わないことになっています。
その流れで、法人化した場合についても、5名未満のため、社会保険に加入しなくてもよいと考えてしまったようです。
<対応>
医療法人になったわけですから、スタッフ数が、これまでと変わらなくとも社会保険に加入しなければならないでしょう。
個人診療所の場合は常勤5名未満なら強制はされることはありませんが、法人の場合については、人数に関係なく、強制加入となることに留意しなければなりません。
<税法等の解説>
医療法人の社会保険
法人になると、社会保険に加入する義務が生じることになります。(個人診療所も、常勤が5人以上になると強制加入となります。)
○ 社会保険について
健康保険は、医師国民健康保険・歯科医師健康保険に加入しているケースが多いので、
この方が有利な場合が多いと考えられます。そのため、診療所としては年金事務所に健康保険適用除外申請を行うことになり、厚生年金のみに加入することになるようです。この場合については、健康保険は医師国民健康保険組合・歯科医師健康保険に、厚生年金は年金事務所に申請手続をすることになります。
○ 対象者
厚生年金の対象者については、常勤社および勤務時間が常勤者の4分の3以上のパート
タイマーとなります。短時間パートタイマーは、厚生年金の対象から外れることになります。
○ 労働保険
労働保険については、そのままの形で法人に引き継がれることになります。もし、法人
化したのち、時間を置かずに退職した場合についてでも、個人診療所の勤務期間を合算した雇用保険が受給されることになります。ただし、変更の届出手続は必要となります。院長先生や奥様が役員である場合については、原則として、雇用保険および労災保険の対象者ではないことに留意しましょう。
なお、1996年に会計検査院が厚生年金未加入の医療法人や、代表者が未加入の法人などの検査を行いまして、未加入が発覚した法人については、検査月の1日付けで加入手続を行うことに決定しました。その後、医師国保の加入に際して、厚生年金の加入を確認することが増えていることもありますので、注意が必要となります。
○ 法人のデメリット
法人設立によるデメリットとしては、社会保険の強制加入によって義務づけられる社会
保険料が増えることが考えられるでしょう。個人病院の場合については、社会保険の加入が任意であるため、働く人が、自分で国民健康保険と国民年金保険料を負担するケースが多いようですが、法人設立後は今まで各自が負担していた社会保険料の半分を法人が支払うことになるようです。
(例)院長の事業所得1700万円、青色専従者給与の妻の所得600万円、勤務医を含む従業員の給与1500万円の診療所においては、個人で運営している場合についてと医療法人かした場合の保険料の違いについては、以下のようになるようです。
(1) 個人病院
国民健康保険料+介護保険料=60万円(市によって上限は違います。)
国民年金保険料15020円×2人分×12ヶ月分=360480円
合計 約96万円
(2) 医療法人
従業員分=163万円
院長と妻の分=171万円(個人負担額の171万円は、別途、理事報酬から差し引きます。)
法人負担額合計=334万円
法人化によって社会保険料の法人負担額が増えることになるようです。そしてその分経費が増えるので税金が減ることになります。ただし、減少する税額と増加する社会保険料の法人負担額を比べると、社会保険料の方が多くなるようです。医療法人設立の際については、社会保険料の負担が大きくなることに注意する必要があると考えられます。
<POINT!>
医療法人の場合、社会保険料の法人負担が増えることになりますが、従業員にとっては福利厚生が充実することになります。従業員の確保にあたってはメリットといえるでしょう。