医療法人の機関についてが、わかりません。
神奈川県で医療法人を設立して5年が経ちました。監事を何かと便宜の図れる親族の者
に替えたいと思い、選出することにいたしました。
すると、神奈川県の衛生局から監事の変更について連絡がありまして、親族は就任できないため、選出しなおしてくださいと言われてしまいました。
<失敗のポイント>
(1) このケースの場合において、監事は、法人の財産状況および理事の業務執行状況を監査する職務であることを理解していないのでしょう。
(2) 親族者および医療法人と取引関係のある者は監事には就任することができません。
<正しい対応>
(1) まずは、監事を変更するのであれば、第三者に依頼するべきでしょう。さらに、取引関係のない知人等の外部の第三者であることが必要となります。
(2) 親族が監事になると確かに便宜が図れると思われるでしょう。しかし、医療法人を監査する職務を遂行することについては、親族であるために、かえって難しくなる可能性があります。5年間、監事を行ってきた方の継続が不可能になれば、第三者の選出が必要となるでしょう。しかし、便宜を図ってもらいたいというのであれば、もう一度考え直してみることも大切になるでしょう。現在の監事が、監査の職務の適任かどうかを考えることが大切となります。
<税法等の解説>
医療法人の機関
医療法人財団の運営機関には、理事会、評議員会並びに監事があります。
医療法人社団の運営機関には、社員総会、理事会並びに監事があります。
○ 医療法人社団とは
医療法人社団においては、社員総会が法人の最高意思決定機関となります。
ここでの法人運営の重要な事項については、社員総会の議決が必要となるでしょう。
医療法人社団については、運営機関として社員総会と理事会の2つが設置されており、社員総会は、定時総会と臨時総会とに分けられることになります。
○ 医療法人の行う行為について
法人の行う行為は、すべて定款等法令または社員総会の決定に拘束され、理事長といえども独断で処理することは不可能となっています。
日常の業務については、社員総会等の委任を受けているものとみなされることになりますが、一定の範囲を超える新たな業務(高価な物品の購入、改修、借入金)は、必ず法人の最高意思決定機関である社員総会の議決にて決定することになります。
社員総会は、定款の定めにより定期的に開催する必要があります。また、定款の定めるところにより、議決すべき議題がある場合には、その度に臨時総会を開催することが可能となります。
○ 理事会とは
理事会については、社員総会で決定された事項を執行する機関となります。また、これ
を監査する機関として監事がおかれ、法人の財産状況、理事の職務執行状況等の監査を行うことになるでしょう。
○ 監事とは
監事とは、医療法人の内部管理を目的として、業務や財産などの監査を担当する者のことになります。改正医療法によって、監事の業務が強化されることになりました。株式会社では監査役に当たり、原則として1人以上置くことが求められていることに留意しなければなりません。
医療法人の監事には、次の業務が存在しています。
(1) 業務あるいは財産の状況について、毎会計年度監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3ヶ月以内に社員総会または理事に提出すること。
(2) 業務と財産の状況を監査すること。
(3) (2)の規定による監査の結果、医療法人の業務、財産に関し、不正の行為、法令、定款、寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを都道府県知事、社員総会、評議会員に報告すること。
(4) (3)の報告をするために必要があるときは、社員総会を招集。
(5) 業務と財産の状況について、理事に対して意見を述べること。
監事は医療法人の業務や財産の状況を監査するために、実際に法人監査業務の実施が不可能な者が名目的に選任されていることは適当ではなく、公平に財務諸表を監査業務を行うことから独立性を担保するため、理事、評議員および法人の職員を兼任していないこと、他の役員と親族等の特殊の関係がある者ではないこととなっています。
<税理士からのPOINT!>
医療法人の性質をよく理解して、監事を選出することが重要になります。
取引関係のない知人等の外部の第三者に依頼することが必要ですから、監事の選出に迷う倍は、専門家に相談することが望ましいと考えられます。