相続税の課税体系について教えてください
現在の日本の相続税の課税方式は、遺産課税方式と遺産取得課税方式の折衷方式をとっています。
遺産課税方式とは、被相続人の財産総額に対し相続税を課す方式です。課税されるのは財産を取得した相続人でなく、財産をのこした被相続人です。アメリカ合衆国ではこの方式で税が課され、相続が発生した際には先に財産から税金を徴収して残りが相続人間で分配されます。この方式だと、相続人間でどのような財産分配がなされても全体の相続税額には変化はないので、課税の公平性が保たれます(遺産総額が同じ10億円のA家とB家なら税額は全く同じ)。しかし、同じ取り分でも、例えば被相続人の遺産相続が1億円のC家の相続人が1000万円取得した場合と、遺産相続が10億円のD家の相続人が1000万円取得した場合では税額が異なります。同じ金額しか受け取っていないのにD家の相続人の税額が重くなってしまい不公平ですよね。
遺産取得課税方式とは、相続人が得た財産の価額に対し課税する方式であり、税が課されるのは財産を取得した相続人です。これだと、相続した財産の価額に比例して税負担が増加するので課税の公平性が保たれます。しかし、遺産分割のやり方次第(相続人が1人で全額取得した場合・10人が均等に分けた場合)で相続税の総額が変動するので、同じ10億円の遺産相続があるA家とB家間でも被相続人ペースでみると税負担が不公平になってしまうことがあります。
現在の日本では相続税の総額の計算のときには遺産課税方式の考え方を、各人に相続税額を配分する際には遺産取得課税方式をとっています。ねらいとしては遺産取得課税方式のデメリットを無くすためですが、逆に遺産課税方式のデメリットが出てきます。また、近年では環境の変化や格差社会などの視点から、相続税の課税方式について遺産課税方式や遺産取得課税方式を見直そうとする動きがあります。