ホームページの導入について、教えてください。
このたび、クリニックの診療案内等、情報の公開を目的としたホームページを作成し、
導入しました。
自動的に待ち時間を掲示するシステム等も施したため、かなり高額な制作費になり、全額を経費に計上しました。しかしその後、税理士から「全額を広告宣伝費として計上するのは、誤った処理ですよ。」という指摘を受けました。
<失敗のポイント>
ホームページは原則、広告宣伝費として一括損金算入できます。
しかし、プログラミング言語を用いてデータベースやネットワークにアクセスするようなホームページは、その費用を一括損金算入することはできません。
<正しい対応>
本事例のように、プログラムを含むような制作費の部分は、ソフトウェアとして資産計上しなければなりません。ソフトウェア作成費用は、他の作成費用とは別に「無形固定資産」となり、償却年数は5年となります。
ソフトウェアを区別できない場合は、全額「無形固定資産」として計上しなければなりません。それを避けるためには、見積書・請求書で内容を明確にしておく必要があります。
<税法等の解説>
ホームページの作成
ホームページの作成は、原則的に、支出時の損金として取り扱いますが、例外もあるので注意が必要です。
○ ホームページ作成費用の取り扱い
ホームページ作成費用については、金額、ホームページに附帯する機能、使用期間など
によって処理の方法が異なり、広告宣伝費として一時の損金に算入する場合やソフトウェアとして資産計上する場合などが考えられます。
したがって、作成費用についての内訳等の詳細がわかる資料を確認して処理の判断をする必要があります。
○ 一時の損金に算入する場合、ソフトウェアとして資産計上する場合
通常医療法人の場合、ホームページは医院のPRのために作成されるものであり、その
内容は頻繁に更新されるため、開設の際の作成費用に支出の効果が1年以上には及ばないと考えられますので、ホームページの作成費用は、原則として、その支出時の損金として取り扱うのが相当であると考えられます。
しかし、例えばホームページにデータベースにアクセスできるような機能などのプログラムが組み込まれている場合には、プログラム作成費用に相当する部分はソフトウェアとして資産計上を検討する必要があります。
ただし、その作成費用が10万円未満である場合や使用可能期間が1年未満である場合には、少額原価償却資産として、一時の損金として処理することができます。
また、その作成費用が10万円以上30万円未満である場合には、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例により一時の損金に算入にする方法や、その作成費用が10万円以上20万円未満である場合には、一括償却資産として3年に渡り均等償却する方法も選択できます。
なおソフトウェアとして資産計上した場合には、無形固定資産のソフトウェアの法定耐用年数5年に渡り償却していくことになります。
○ 作成費用が10万円以上になる場合
ホームページを公開し、かかった費用を会計処理する際、ホームページ作成費用の額が
10万円以上の場合は、損金として一度に落とすことができず、何らかの資産として計上する必要が生じる場合があります。税務上、利益を圧縮する恐れのある高額の支出は、減価償却資産として、その資産を使用可能な期間中、分割して償却していくよう決められています。
10万円という金額的基準だけでなく、そのホームページがどのような目的で作られたのかということも判断されます。会社のプロフィールや新製品、キャンペーン等の紹介が載っている一般的なホームページは、街中や駅で見かけるポスターや、テレビやラジオで流れるCM同様、法人の広告宣伝の手段の一つと判断されます。そのため、ホームページの作成費用は、会計上も税務上もポスターやCMと同様、広告宣伝費として、ホームページを公開した年に一括して損金算入してよいということになります。
○ 明らかに1年を超えて使うホームページについて
プログラム作成費用に相当する部分がなくても、ホームページの内容が更新されないま
ま使用期間が1年を超える場合にはその作成費用はその使用期間に応じて償却します。
<税理士からのPOINT!>
ホームページ作成費用のうちプログラム作成費用に相当する部分はソフトウェアとして資産計上を検討する必要があります。