医療法人の認可について解説してほしいです。

 

Q.私は内科の医師です。数年前から都内でクリニックを経営しています。経営状況は良く、患者数を順調に増やしています。個人所得はクリニック開設当初の3倍となりました。
 将来を考え、私は法人化をしようと考えました。早速株式会社を設立する場合と同様に定款を作成し、登記のため準備を進めておりました。すると、知人に「医療法人は、都道府県の認可が必要だ」という指摘を受けました。私はこのことを知りませんでした。私が知ったときには、今年度の医療法人の設立認可申請書の提出期限が既に過ぎていました。私は申請することができませんでした。私はどう取り組めば良かったのか教えてください。

<解答>
誤解されやすい医療法人設立は、届出制ではなく実は都道府県の認可制です。さらに、都道府県から届出後すぐに認可が下りる、というわけではありません。一般的には、年2回(自治体によっては3回)の受付期間が設けられていますが、受付期間を過ぎた場合、申請をすることができなくなるのです。

正しい対応
1)スケジュールを組んで、医療法人設立に取り組んでいきましょう。
2)医療法人設立認可の年間計画は、都道府県の保健局のホームページにて閲覧可能です。参考にすることをお勧めします。
3)申請期間は通常年に2回設けられていますが、申請期間前に設立説明会が行っている都道府県もあります。設立説明会に参加し、申請書類の種類とその作成方法について、理解を深めましょう。
4)仮申請後、認可を受けて実際に法人としての診療活動を開始できるまでに、半年ほどの期間を要すると想定しておいてください。

[税法等の解説]
医療法人設立の認可申請手続き
① 医療法人設立を予定する者のみが、医療法人設立認可申請手続の対象です。
② 医療法人設立認可を受けるため、提出書類、受付方法の理解を十分に深めておいてください。

設立認可までの大まかな流れ
 東京都を例に流れを説明すると、まず、9月の初めに申請仮受付期間が設けられます。以降、同年の12月までが設立認可審査期間です。
 その後、設立認可申請書の本申請を行います。そして、翌年の1月末の医療審議会での諮問および答申を経て、いよいよ、2月中旬から下旬に『設立認可書』が交付されます。
 設立申請後、晴れて認可を受けるに至るまでには、5~6ヶ月間の期間を要することを想定しておいてください。

申請書仮受付の書類
 次ページに挙げる書類が、医療法人設立認可申請書として必須です。
 申請書仮受付の書類一式の提出は、郵送あるいは持込みでなければ受理されません。
 また、提出書類に押印をしないでください。そして、謄本や印鑑証明等は原本を添付してはいけません。コピーを添付してください。
 受付は、上記の方法以外で行うことはできませんので、注意が必要です。

申請に必要な費用
 申請と認可の手数料は発生しません。

申請にかかわる質問
 東京都の場合となりますが、質問の対応はファクシミリによってのみ受け付けています。電話では対応しません。なお、質問の対応は都道府県によって異なりますので、ホームページ等で必ず確認してください。

医療法人設立認可書類一覧(平成24年東京都の場合)
項目 様式 注意事項
医療法人設立認可申請書 1 日付は東京都が指定した日
定款(寄附行為)
設立総会議事録 2 仮受付より以前の開催日付
財産目録 3 基準日あり
財産目録明細書 4 基準日あり
不動産鑑定評価書 不動産を拠出する場合
減価償却計算書 5 基準日あり
基金に関する書類 6-1~4 基金制度を採用する場合
預金残高証明書 発行日から3ヶ月以内のもの
負債内訳書 7-1、2 基準日あり
負債説明資料 8
負債根拠資料 (例)工事請負契約書、領収書等
債務引継承認願 9-1~3
リース物件一覧表 10 物件名、数量、業者名簿等を記載
リース契約書(写し) 現行のものの写し
リース引継承認願 11
役員・社員名簿 12 基準日あり
履歴書 13 設立総会の日付
印鑑証明 できるだけ新しいもの
委任状 14 設立総会の日付
役員就任承諾書 15 設立総会の日付
管理者就任承諾書 16 設立総会の日付
管理者医師免許証(写し) 原寸大
理事長医師免許証(写し) 原寸大
理事医師免許証(写し) 原寸大
医療施設の概要 17
周辺の概略図 最寄駅等、交通経路を表示する
建物平面図 1/100,1/200程度のもの
不動産賃貸借契約書(写し) 現行のものの写し
賃貸借契約引継承認書(覚書) 18
土地・建物登記事項証明書 契約の目的物となっている建物等
事業計画書(2ヵ年又は3ヵ年)20 
予算書 21
予算明細書
職員給与費の内訳書
実績表(2年分) 24 設立場所における実績が浅い場合(確定申告の場合等)は直近までの試算表を添付すること
確定申告(2年分) 申告受領印付の写し全部(付表を含む)
診療所の開設届けの写し 個人診療所の開設実績のある場合
※拠出(寄附)申込書の添付は不要です。

個人で2年以上、現在の診療所を開設している場合に開設する医療法人は、様式14の『委任状』、様式20の『設立後2年間の事業計画』、様式21~23の設立後2年間の予算書の提出を省略することができます。
なお、その場合の診療所は医師・歯科医師が常に1人または2人勤務している診療所のみを指しますので注意が必要です。
また、過去2年間の黒字確定申告書を添付することが可能です。ただしその場合、医療法人設立後2年間において事業変更がないことが条件です。

税理士からのPOINT!
 医療法人は認可制ですから、申請時期があらかじめ定められています。そのため、設立の準備を進める上では申請時期を確認することが欠かせません。

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